— 青木伸子 さん —

*episode 長野の親戚のおじいちゃんは、天台宗のお坊さんでした。 オシャレな方で、長野の凍るような寒さの中、黒い毛皮のピカピカ光る長いコートに、 尻尾のついた毛皮の帽子をかぶって、街にでては美味しいものをたくさんご馳走してくれました。 時には、あっさり美味しい生クリームで膨らんだフルーツサンド。 時には、熱々のおみせグラタン。 もちろん、信濃の蕎麦も。 そのおじいちゃんの十八番が、ボルシチとピロシキでした。 また、絵画や骨董も大好き。 ピカソのエッチングや中川紀元の大作などがかべにかかり、 アートの楽しみ方もよくご承知の洒落もの。 ある日、 「のぶさんや、お土産にディオールの香水と江戸時代の黄瀬戸の徳利どちらがいいかね。」 と、問われました。 田舎の高校生のこと。どちらの値打ちもよくわからなかったけれど、 香水は大人すぎると感じたので、渋いというか、ふるっちい徳利をいただくことにしました。 50年近く経ち、ボルシチは我が家の冬の定番メニューに、 また、黄瀬戸の徳利は水彩画の定番モデルになりました。 おじいちゃんのべらんめ口調が、蘇ります。 「のぶさんや、今日はうまいもの食わせるよ」 *recipe 材料8皿分 ・キャベツ 半玉 ・スネ肉あるいは、バラ肉(牛肉)300g ・にんじん 1本 ・玉ねぎ 2コ ・セロリ 1/2本 ・じゃがいも 2コ ・ローリエ 2枚 ・トマトジュース 500cc ・塩 小さじ1くらい ・水 2ℓ 1) キャベツはざくぎり、 にんじん、じゃがいもは一口大、 玉ねぎはくしがた、 セロリは斜め切り、 肉は大きめのひと口大に切る。 2) 2ℓの水に、肉、キャベツ、セロリ、ローリエ、にんじん、玉ねぎを入れ、強火で煮て、あくを取る。 あくをとって、澄んだスープになったら、弱火で、1時間コトコト。(塩、小さじ1加える) 3) トマトジュースとじゃがいも投入。さらに、1時間コトコト。 ブイヨン投入。 一度さまして、ふたたびコトコト。 4 ) とろりとした感じになるまで、煮込んでください。 ☆ポイントは、材料を炒めず、水の中にどんどん材料を投入していくところです。 酷寒の地で、凍った肉やら野菜の端きれが、どんどん美味しいスープになっていくイメージでお願いします。 本場では、ビーツをいれるらしいので、こちらもお試しあれ。土っぽい味がしますよね。 おじいちゃんは、ニンニクもいれてたかも。 ちなみに、トマトジュースではなく、トマトピューレを使っていました。 冬のお野菜、蕪やブロッコリーも加えるとまた、楽しい。 寒い冬、美味しく、あったかくおすごしください。 |